「返して! 顔返してよお!!」累(かさね)*1巻
伝説の女優は美しいままこの世を去り、醜い子供だけが残されたーーー
小学生の淵かさねは伝説とされた女優の子供であったが、母は亡くなり、学校ではその容姿からいじめられていた。
クラスメイトは可愛い子が多く、かさねはいじめられながらも彼女らの容姿を羨んでいた。
「ああ いいなあ かわいいなあ
きっと鏡を見るのも毎日たのしいんだろうなあ」
ある日かさねは学芸会(シンデレラ)の主役に、抜擢される。
女優の子であるかさねのシンデレラをみたいと、いじめっ子のイチカが推薦で決めたのだった。
舞台で晒し者にするため、かさね抜きでシンデレラの練習をするクラスメイト。シンデレラの代役はイチカ。かさねは学芸会当日まで孤独に練習を重ねる。
母は亡くなる前、かさねに辛いときは「ママの鏡のひきだしの中の”赤い口紅”を……」を言い残していた。母は醜いかさねが今後どのような目に合うか想像がついていたのだろう。
かさねは学芸会当日、母の真っ赤な口紅を引いて舞台に上がる。
最初こそ観客は気味悪がるものの、かさねの努力と母譲りの才能から、徐々に引き込まれていく。
クラスメイトはざわつきだし、焦ったイチカは次のシーンの暗転の際にかさねと交代することを提案する。このまま演技を評価されたとかさねが自信をつければ、自分たちが行ったいじめを教師に言ってしまうかもしれないからだ。
イチカの策略で劇からおろされたかさねは、
「どんなに努力しようと どんなに上達しようと 私の顔では 母の娘だと証明することすらできないのだ
そんなの わかっていたことじゃない」
と悔しさに醜く笑う。
イチカとかさねはふたりで保健室に向かうが、かさねは口紅の本来の使い方を実行する。
母は「口紅をぬって あなたのほしいものに くちづけを」と言っていた。
かさねとイチカの顔だけが入れ替わり、イチカは信じられない現実にかさねに詰め寄ろうとする。かさねは元に戻せるのは自分だけといい、イチカにトイレでじっとしているように伝え、シンデレラに戻る。
このとき舞台にあがったかさねは、醜い自分ではない美しいイチカの顔では世界が違うことを体験した。
笑っちゃうわよね たかだか小学生の学芸会よ
ガラスのくつなんて銀紙貼りのパンプス
けど私は 間違いなくシンデレラだった
かさねは現実に戻りたくないと思う。そして母の顔が母のものではない可能性に気づく。
夜になり、イチカを屋上で解放したかさねは、イチカの顔で見た世界が素晴らしいものだったと伝える。
それを聞いたイチカはかさねに謝り、「これからはもういじめたりしないわ」とかさねに言うが、それはかさねを油断させるための嘘だった。
早く顔を返せともみ合いになり、イチカは屋上から転落してしまう。
かさねは醜い自分など生きていていいはずがないと自殺しようとするが、母の幻によって思い止まる。
イチカが死に、翌日口紅の魔法が解けたかさねだったが、醜い自分を捨て、美しいものとして生きていく決心をする。
これすーごくわかります。特に女性ならなおさらですよね。
きれいな女性は大抵みんなに可愛がってもらえます。まあ妬みとかストーカーに苦しむときもあるかもしれないけれども。誰かがすぐ助けてくれますよね。
醜く生まれてしまうと、困ったときに助けもないし、仕事にも就きづらいし(営業は取引先に顔を見せる・事務は会社内で顔を見せる・販売はお客様に顔を見せる)、頭が同程度で顔に差があったら間違いなく顔がいいほうをとりますよね…
女性の定めともいえる容姿問題・演劇をモチーフにしたまんがです。面白いので是非!
著者:松浦だるま
発行:株式会社講談社
ISBN:978ー4063524857